第2 合否の決まり方
1 合否は,弱点で決まる
二回試験は,消極方向の検査なので,基本的には,あまりにひどい弱点がないかどうか,で判断される。強みと弱みの総合考慮ではなくて,弱点が許容範囲内かどうか,で判断される。
これは,次の二つの場面で妥当する。
(1)大きな視点
ア 1科目でも落ちたら,不合格
5科目のうち,1科目でも落ちたら,不合格になる。
他の4科目が,いかにすばらしい成績でも,関係ない。
イ 事実認定問,法律問等
各科目については,事実認定問,法律問のどちらか一方が壊滅的だったら,危険。
(刑事裁判は,小問での足切りがあるらしい。)
(2)小さな視点
各起案ごとに,①知識→②思考→③表現の一番弱いところで成績が決まる。
2 小さな(各起案の)視点
(1)知識・思考・表現
code:そして,その成績は,
ⅰ 知識 →ⅱ 思考 →ⅲ 表現のプロセスのうち,一番弱いところで決まる。
(2)料理を作る3人組
突然ですが,以下のお話しを考えてみてください。
code:小話
A,B,Cの3人が,役割分担をしつつ,料理を作ることにした。
Aは材料調達係。
Bは調理係。
Cは盛りつけ配膳係。
この3人によって提供される料理のレベルは,A,B,Cのうち,一番ヘボい人によって,決定される。A,B,Cのうち,一番優れた人によって,ではないし,いくらひとりがすごくても,他の人のヘボさをカバーすることは,かなり難しい。
たとえば,Aがヘボかった場合。料理に必要な材料を集めることができないとか,材料を集めてきても,そのどれもが腐っていたりしたら,Bが超一流の料理人であっても,おいしい料理を作るのは,かなりしんどい。いわんや,Cが盛りつけや配膳でカバーするのは,ほぼ不可能。
次に,Bがヘボ料理人だったら,いくらAが新鮮な食材をふんだんに集めてきたところで,おいしい料理はできない。
また,Aも優秀,Bも優秀だったとしても,Cがヘボかったら,それで料理は台無しになる。Aが新鮮な食材を十分に集め,Bがそれをすばらしい料理にしても,Cが,味噌汁を平皿に盛りつけてこぼしてしまったり,天ぷらと煮物を同じ小鉢に詰め込んで天ぷらがぐちゃぐちゃになってしまったり,最初にほかほかご飯とデザートの杏仁豆腐を出してしまったら,料理は台無しとなる。
(3)一番弱いところで成果が決まる
この料理の例でもわかるように,性質の異なる複数の作業が,一連のものとして連なって,何らかの成果物が生まれる場合,その成果は,一番弱いところに制約されて決定する。
起案でも同じ。記録に基づく起案の場合,成果物たる起案は,①知識,②思考,③表現,という三つの過程を経て,生まれる。起案の成績は,一番弱いところで決まってしまう。
3 各要素の説明
料理にとっての材料のようなもの。
起案では,条文,判例,通説の理解などである。
これは,二回試験が始まる時点で,既に決まっている。
ただし,デイリー六法に助けてもらえる(デイリー六法には,参照条文,索引がついている)。また,記録の中にも,ヒントがちりばめられている(検察官のPSとか,代理人の尋問事項とか)。
料理にとっての,調理プロセスのようなもの。
思考の要素を分解すると,だいたい以下の二つ。
code:思考の要素
ア 読む
イ 組み立てる
ア 読む
記録を読む。
事案を理解する。
イ 組み立てる
設問の解答を考える。
記録の材料から,一定の論証へ,組み立てる。
料理にとっての盛りつけ・配膳のようなもの。
表現の要素を分解すると,だいたい以下の三つ。
code:表現の要素
ア 型に従う
イ 構成する
ウ 文章を書く
ア 型に従う
自分の思考を,起案で求められている型にはめ込む。
イ 構成する
起案の構成を作る。
項目の分け方,項目のタイトルなど。
ここでも,型が力を発揮する。
ウ 文章を書く
各項目に付き,自分の思考を,文章として書く。